しかしその後、彼は予想はずれの苦労をしいられることとなる。
町中を忙しくかけずり回っているルークは、タイミングの悪いことにいつもの交番にはおらず(「交番ってふつう警察のひとがいるところだとは思うんだけど、ルークさんは探偵なんだか刑事なんだか、ちょっとよくわからない」、とコウタ)、へとへとになって引き返した道の途中で、偶然彼とはち合わせることができたのだ。
たいしてつかれた様子もなく、さっそく「四つ葉のクローバーが生えてる場所、知りませんか」とたずねるぱみゅに対し、ルークは得意満面の表情で、西の丘のことを教えてくれた。
夕方になると一番最後まで夕焼けのオレンジを見守ることができる、だだっぴろい大きな草むらのことだ。
近くには傾斜のある崖がそびえたっているから、気をつけるんだよ、という忠告も添えて。
それにしても、ルークさんはこの変な格好をした妖精を見ても、別段驚くことはないんだな。さすがは情報通だとコウタがひとり感心していると、三人のうしろを「かっぱえびソん」をぽりぽりかじるルナがすーっと通り過ぎたので、ルークは怒って彼女のことを追いかけていってしまった。
あのふたりは食い逃げ常習犯と探偵という間柄だけど、なんだかずいぶんと仲良しなのだ。
あんなふうにだれかとわけへだてなくはしゃぐことができたら、それはとてもたのしいことだろうなとコウタは思う。
……そう、たとえば、どしゃ降りの日に黙って傘をさしかけてくれた、赤い太陽のようなあのひとといっしょに。
でも、コウタにはいつそんなことができるようになるのか、まったく想像がつかなかった。
きっと自分は、心の内側をぜんぶさらけだして、そうしてきらわれてしまうことが何よりもこわいのだ。
そんな臆病な自分のことをさしおいて、小さな妖精はぐんぐんぐんぐんと坂をのぼってゆく。
向かい風が吹きつけてきても、わき道にひからびたみみずが死んでいても、よろめくことなくまっすぐ前に飛んでゆくのだ。
少しだけ斜めに傾いた太陽は、コウタの目を真正面から突き刺した。
まぶしすぎて輪郭しかとらえられないそれを、コウタはぱみゅの背中越しに食い入るように見つめてみる。
涙がでそうなほど、目にしみて痛かった。